東京下町から共に世界へ ー HMAENを支える想い03 ー

2018.2.22

東京の下町モノづくりの街で生まれるHMAENは、“本物”を生み出すことの喜びと困難を知る多くの専門業者たちの仕事に支えられています。ときに時代に逆らうようなプロ根性を見せながら、たくましく業界を生き抜いてきた彼らの目にHMAENはどう映っているのか? 第3回は、昭和26年に台東区で創業し、67年に渡りこの地でカバンのショルダーや持ち手などに使用されるテープ等を扱い続けてきた「三協テープ有限会社」の佐久間さんにお話を伺いました。

——佐久間さんはこの会社に勤めて何年目になるのですか

もうすぐ8年目になりますね。正直なところ、偶然です。たまたま私の母が社長と友達だったことがきっかけで、ここで働かせてもらうことになりました。

 

——最初は、どんな仕事かもあまり想像がついていなかった?

そうですね(笑)。この会社に入る前に聞いていたのは、昔はあぶちゃん(幼児のよだれかけ)やおむつカバーなんかに使われるヘリをとるための面テープなどを扱っていて、いまはバッグの材料となるテープが主な商品だというぐらい。バッグが特別好きだったわけではないのですが、ファッションやものづくりには興味があったので、とりあえずやってみようかなと。

——入社してすぐにHMAENデザイナー・大友との付き合いが始まったそうですが、最初はどんな印象でした?

大友さんの名前は、彼が以前に手がけていたブランドで知っていましたし、僕が入社する前からウチの会社は大友さんと取引をさせてもらっていたので、社長からは「とても面白い人だ」と聞かされていたんです。でも、実際に会ってみると、イメージとはかなり違いましたね。まさかこんな人がデザインしているとは思わなかった! 体も大きいですし、なんだか謎の威圧感があるじゃないですか(笑)。

 

——その威圧感で、グイグイ無理難題を押し付けられたり(笑)?

まあ、それも完全には否定しないですけど(笑)。でも大友さんとのやりとりって機械的な発注〜納品ではなくて、すごく密なコミュニケーションなんですよ。いつも最初の発注は「かっこいいテープない?」みたいな感じで、とにかくアバウト(笑)! あまり細かいことは言わないで、ある程度僕に任せてくれるので、気がついたらこちらもやる気にさせられていることが多いですね。提案には必ず耳を傾けてくれますし、気に入らない時はスパッと言ってくれるから気持ちがいい。

——三協テープさんは大手バッグブランドとも付き合いがあるそうですが、大友が使うテープに、他とは異なる特徴はありますか?

基本的にはシンプルなものを選ぶ傾向があるのですが、ただシンプルなだけでは絶対に納得してくれないんですよ。「ありそうでないもの」や「これみよがしではないけれど、きっちり作られているもの」。大友さんはそのクオリティをどこまでも追求するので、他のブランドと比べても別注をかける頻度がかなり高い。大手だと生産量の関係で難しいスケジュールでも、HMAENだとなんとかやれてしまうことも多いので、別注をかけるたびに心臓に悪い思いをしています。正直なところ、体には全然よくない仕事ですね(笑)!

 

——そのぶん一緒にものづくりをしているという感覚も大きい?

それはもちろんありますね。ものづくりに最初から立ち会わせてもらっているという実感はありますし、自分のなかでは大切な仕事の一つだと捉えています。まあ身体に悪い部分は、そのぶんお酒でも奢ってもらう感じで(笑)。

——よく大友と飲みにも行くのですか?

ええ、よく連れて行ってもらっています。大友さんは裏表のない人なんで、お酒も楽しいですよ。大事なことも言うけれど、その何倍もくだらないことも言いますしね(笑)。でも、そういう付き合いの中で、だんだん彼の好みがわかってきたような気がします。

 

——新作のリュックに使われるテープも扱うそうで、いま(2017年11月取材)がその選定の最中だと聞きましたが……。

そうなんです。HMAENは革ブランドなので、これまではテープを使う箇所もそう多くはなかったのですが、今回はナイロンリュックということで、ショルダーや持ち手など、たくさんテープを使ってもらえる箇所がある。だからこちらもかなり気合いが入っていますね。大友さんのものづくりって、悩んで悩んで、やっと方向性が固まってきたら、そこから一気に形になっていくんですよ。きっと悩む時間がすごく大切なんでしょうね。いまはまさにその時間の最中でしょうから、それこそ酒の席で鍛えた勘を活かして、なるべく良い選択肢の中で悩んでもらえるよう、クオリティの高い提案を重ねたいと思っています。

——業界全体としては決して活況とは言えない昨今ですが、これからやってみたいことはありますか?

とにかく第一は、お客様にクオリティの高い仕事・モノを提供すること。ウチはありがたいことに、HMAENをはじめ良い物を使うブランドに重宝してもらえているので、まずはその期待にしっかり応えていくことが大切だと思いますね。そしていずれは、勉強と経験をもっと重ねて、例えば大友さんに「テープ1本から、バッグ全体を創造してもらうような仕事」を提案してみたい。ものづくりに携わる人にインスピレーションを与えるような素材を、自分から持ちこめるようになれたらと思っています!

【連載】
東京下町から共に世界へ ー HMAENを支える想い01 ー
東京下町から共に世界へ ー HMAENを支える想い02 ー