実は最近、お客様が1周して再びHMAENのバッグを手に取ってくれているのではないかと思うことがあるんです。特にこの「Paris」は、いろんなトートを探してこられた方に「やっぱりこれが良い」と言ってもらえることが多い。実際に私も、トートを作り始めてからずっとこのデザインを変える必要性を感じませんでした。しかしそれだけに、このタイミングでもう一度このバッグを作り込んでみたいという想いがあったのです。
「Kamri」にも採用した平丸手のハンドルは今期の大きな変更点ですが、この「Paris 3rd」で特に注目して頂きたいのは、そのハンドルの縫い付け部分。バッグとの縫い付け部分の革が8mmほど伸び、全体的なシルエットに締まりが出ました。実はこの部分の縫製は、行って帰っての二度縫いです。細くて厚い革のセンターに針を通す作業は技術と時間を要する本当に面倒な作業ですが(笑)、これをやることで強度も増し経年変化による型崩れも防げるでしょう。
それからもう一つ、縫製で言えば今回はステッチが太くなっています。こちらも見た目を引き締めつつ、強度を高めるという狙いがあるのですが、糸が太いとそのぶん革を引っ張る力も強くなり全体のシルエットも変わってくる。そのため、結局は裁断のパターンから全てを見直すことになりましたが、これもまた自分たちの縫製技術が高まったからこそ必要となった新しい作業なのです。
私はHMAENでとにかく腕を磨き、クオリティを追求することで商品を刷新していきたい。そうすることが、私たちが小さなブランドでも、お客様に必要とされる存在であり続けるための唯一の方法だと思っています。「Paris 3rd」は、そんな私たちの成長をお客様に実感して頂けるトートになったはずです。
(2017SS Topics)